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製品・技術


清掃・洗浄と用水・排水処理

医薬・食品機械の定期分解洗浄(C.Q.P)と無分解洗浄(C.I.P)のできる自動洗浄機
インタメディック株式会社 代表取締役 技術士電気電子部門 総合技術監理部門 齊藤寿俊

1 はじめに

医薬・食品製造機械では,ロット管理のためにロットごとに生産品プラントの定期分解洗浄C.O.P (Cleaning Out Place 分解洗浄)と無分解洗浄CIP(Cleaning In Place 定置洗浄)が必要である。
医薬品製造品目の輸液や注射剤品などの低粘度品または食品の牛乳や果汁・コーヒー飲料・お茶のような低粘度品であれば,生産プラント機械を分解せずにプロダクトを押し流し,ある程度回収して CIPに入る。
高価な高粘度品では『押し流し洗浄』は,困難であるので配管やタンク・ポンプ・バルブなどの機器を分解して,プロダクトをヘラなどで回収の上にCOPのハンド分解洗浄をする。
本装置は,COPに重きを置き開発された自動洗浄機であるが,洗浄の基本バターンのコンピューターと自動洗浄機能を有しているのでシングルユースのCIPの利用も可能である。
双方の機能を持たせた装置で,業界では初めての画期的な装置である。

2 洗浄と滅菌の概念
洗浄の目的は,今まで製造していたプロダクトが,加熱・冷却・濃縮・酸化・停滞などの物理的加工によって,化学的変化をきたし,加工機械に目に見えるまたは見えない形で汚れとなり,長時間の停滞により微生物を発生させるので,大切なプロダクトの変性品をロットごとに取り除くことが重要である。
プロダクトが焼き付けや凝固などの化学的変化を発生させていなければ,単なる常温水流または高温水流で洗浄できるがプロダクトが化学的な変化をしていれば,洗剤の力が必要である。洗剤は,汚れを溶解したり,汚れをはぎ取るなどの方法である。(表1)

滅菌とは,微生物を死滅させることであり,論理的に微生物を無限にゼロに近づける方法である。滅菌の基準を示す指標でISOで採用されているSALは,10^-4である。これは,滅菌前の微生物の存在確率を1.0としたときに,滅菌後のそれを10^-6ということになる。(100万個の菌を培養して1個の菌が残る確率)滅菌の考え方は,図1のとおりである。



3 CIP装置の概念
CIP装置は,1957年の牛乳のH.T.S.T(High Temperature Short Time 高温短時間殺菌)システムの中でUHT(UItra High tempurature超高温殺菌)120~130C×2~3秒滅菌の無菌充填の中で生まれた。
製造終了後に製造プラントを分解しないで,粗洗浄→洗剤洗浄 1→洗剤洗浄2→リンス洗浄→仕上げ洗浄→高温熱水滅菌→乾燥などの工程を行う方法である。
本工法は,1基の洗浄タンクですべての洗浄工程を行うシングルユースシステム(図2)と,各洗浄工程ごとにマルチのタンクを有するマルチタンクユースシステムに分かれる。
小さいプラントであれば,シングルユース方式。大きなプラントになれば,マルチタンクユースシステムが採用される。


図2 シングルユースCIP装置事例

4 COP洗浄の概念
注射・食品製造プラントは,CIPユニットのできる前はすべて分解洗浄であった。
現在でも,CIP洗浄できない医薬・食品プラントは多く残されている。多品種少量生産の時代となり,分析方法にもよるが7割は,COP機械とみてよい。
分解洗浄機械の一般的傾向として,次の傾向と事例がある。

A 医薬・食品の製造工程の中で,インラインプロセス加工工程の少ない工程
B 分解洗浄が必須の加工機
C 医薬品の高粘度皮膚塗布剤ラインの充填機・ポンプ・フィルター・配管類
D 高粘度化粧品の乳化機・発砲機と充填機・ポンプ・配管・フィルター・原料粉処理機
E 液の通り道の小さい乳化機やローター類・ホモゲサイザーなどの特種ノズル,高粘度ポンプのローターやハウジング・バルブ類・チャッキバルブ類
F 2m以下の配管やベンド・チーズ・異径スリーブやジョイント・クランプ類
G ろ過機やフィルター・センサーのSUS接液部
H 小型タンクや充填バランスタンク類・エアベッセル類
I タンパク類の製造工程の焦げ付いた熱交換器のプレートヒーター類・割卵機のフィンガー
J パン・菓子製造工程のオーブンの焼き型トレー(ベーキングパン)やケーキ充填機
K 食品工場での取り外し後のベルトコンベアの洗浄と滅菌
L フードカッター・コミトロール・スクリュ―コンベアのスクリューとハウジング類
M ハムソーセージ工場でのミンサーや挽肉機やカキトリ式熱交換機のブレード類
N SUS類の金属イオンを嫌うガラス石英ガラスプラントの反応装置や攪拌棒・エバポレーター・ミキサーセトラー・フラスコ・大型ビーガーなど

5 COP全自動洗浄機
本COP式全自動洗浄機は,製品の製造完了後に生産機械を分解して部材をあらかじめ設計した洗浄ケージに収納して,0.6~1.5㎥のSUSの洗浄機槽に収納して洗浄を開始する。
洗浄ケージは,あらかじめ洗浄する被洗浄物ごとにノズルの位置とノズルの設計をして形式を決めておく。
ブラシを全く使用しない洗浄機のために,被洗浄物の流速がポイントとなり,この点はCIPと同じく,秒速2m程度のスピードが効率的である。洗浄プログラムはCIPと同じく,熱水粗洗浄→洗剤洗浄→リンス洗浄→93℃までの熱水仕上げ洗浄→乾燥をすべて自動で行う。種類の異なる被洗浄機材のケージは,COP洗浄タンクに入れ,洗浄水入口に連結されて洗浄回路が仕上がる。洗浄水は,機材の内部を洗うスプレーノズルと機材の外面を上下2ヵ所の強力な水圧で洗浄される。
医薬品では,洗浄水を注射用水で行うので,排水の導電率を特定して,汚れが完全に落ちたか自動センサで測定して洗浄Validation記録が取れる。
本COP洗浄機のCIP洗浄機と異なる点は,機器の内面のみならず,機器の外面の洗浄も同時に行うことができるところである。
汚れが残っている場合は,汚れが落ちるまで,自動で洗浄を繰り返す機能を有する。
洗浄ケージは,基本仕様で5基まであり,洗浄中に,次の被洗浄物の準備ができる。洗浄機の外観と被洗浄物のケージ事例(図3)を記す。被洗浄機械が増えた場合は,ケージを増やせばよい。
洗浄機は医薬工場では,未洗浄物の入口と洗浄後の出口を区分する2ドア方式と1ドア方式がある。ドアの開閉は,自動が基本仕様である。


説明:5Lボトル4個、1Lボトル8個、
2Lフラスコ2個を3回で洗浄可能
図3 減菌ゲージ事例2

6 COP洗浄機のフローシート
COP洗浄機の一般的フローシートを図4に記す。洗浄サイクルは,CIPのシングルユースと同じである。
したがって,COP洗浄のほかに規模の小さいプラントのCIP洗浄も可能である。その事例を記す。
重要なことは,COPで洗浄と滅菌をして組み立てたときの汚染の心配である。
その場合,本装置のCIP機能が役に立つ。
COPとCIPの双方の機能の図を記す(図5)。


図4 減菌COP洗浄ユニット事例

図5 COPとCIP兼用事例

7 COP洗浄のポイント
市販の業務用の洗浄機と異なる点は,以下のとおりである。

A 医薬・食品工場で使用する特定の製造機器の洗浄機のためにCOP洗浄機導入前に被洗浄物を分析し,機器のどの部分を洗浄するのか,洗浄水・洗剤流路を分析しノズル の設計をする。
B COPとCIPの洗浄原理は同じ。洗浄の流速を極力早く取れるように1m/Secを維持する。またタンクの底に洗浄水が溜まると,洗浄はできないので水溜まりのない排水が重要。
C 洗剤を使用するときは,汚れを分析して,洗剤の最適設計をして,効率よい活性化を 図る。洗剤の活性化の最適温度は,汚れ・洗剤によって異なるので事前の化学的分析 が必要。
D 大型タンクのCIP時に汚れが落ちない部分は,洗浄ノズルの水流が当たっていないので,合羽と水中眼鏡をかけタンクに潜り,分析確認をしてノズルの改良を図る。
E 本装置は,機種にもよるが2m迄の配管であれば,COPができる。数が多ければ ベンドでつなげば効率的に洗浄できる。
F 異径配管の場合は,洗浄流速が異なるので,よく考慮する必要がある。
G 本洗浄機は,医薬品工場用に設計され,洗浄のValidationができ,記録も取れる。洗浄できたかどうかの監視も付いており,汚れが落ちない場合は,自分で再洗浄を開始する。
H 本COP洗浄機は,COPを使用しない時間にシングルユースのCIPができる。

8 あとがき
国内では人口減の方向にあり,過去の少品種大量生産の時代は過ぎ去り,現在はそれぞれの個性に合わせた多品種少量生産の時代である。
医薬品・食品も同じく,社会のニーズに合った装置が求められている。
本装置は,生産し,その品質を維持する上で大切な,機械の洗浄・滅菌の最も重要項目を確実に実行してくれる装置であり,皆様方の業務のお役に立てるものと思っている。

■転用および参考文献
1)日本医療機器学会 平成29年11月認定『滅菌技士会ホームページ』
2) 食品加工技術 1985 Vol.15 No.9 ロボット洗浄実用動向技術士 齊藤寿俊
3) 食品機械装置 1982 Vol.19 No.1 多品種少量生産の自動化について 技術士 斉藤寿俊
4)食品機械装置 1977 No.157 食品工業におけるポンプの最新の技術的動向 技術士 斉藤寿俊
5) 株式会社KITのカタログ
6) Sinva社のカタログ
7) 株式会社技術情報協会 2017年3月「次世代医薬品工場のGMP適合と設備保全」無菌製剤工場の無人化とその運用 インタメディック株式会社 代表取締役 技術士(電気電子・総合技術監理) 齊藤寿俊